こんにちは、ライターの田中です。
アニメや映画が大好きな私が、おすすめの作品の見どころや感想をご紹介します。
本日は史上最強に「鬱くしい」アニメと言われている『宝石の国』を取り上げたいと思います。
人間とは似て非なる個性豊かな「宝石の国」のキャラクターたち。今回は作品の紹介や、宝石と人間の違いについてなど考察していきたいと思います。
ちなみに私は原作は未読です。あくまでアニメと原作のネタバレ記事をちょちょいと見ただけの感想と考察なので、悪しからず・・・!
※ネタバレ含みます
目次
概要
市川春子原作の漫画『宝石の国』のアニメ化作品。2013年単行本第1巻発売時に、記念フルアニメーションPVが作成されました。
また、同年の2013年発表の「このマンガがすごい! 2014年」オトコ編第10位にランクイン。人間とは似て非なる美しい、そして鬱くしい宝石たちの世界が連載当初から話題を呼びました。
まずは作品の概要についてご紹介します。
キャスト
フォスフォフィライト:黒沢ともよ
シンシャ:小松未可子
ダイヤモンド:茅野愛衣
ボルツ:佐倉綾音
モルガナイト:田村睦心
ゴーシェナイト:早見沙織
ルチル:内山夕実
ジェード:高垣彩陽
レッドベリル:内田真礼
アメシスト:伊藤かな恵
ベニトアイト:小澤亜李
ネプチュナイト:種﨑敦美
ジルコン:茜屋日海夏
オブシディアン:広橋涼
イエローダイヤモンド:皆川純子
ユークレース:能登麻美子
アレキサンドライト:釘宮理恵
金剛先生:中田譲治
スタッフ
原作:市川春子(講談社『アフタヌーン』連載)
監督:京極尚彦
シリーズ構成:大野敏哉
キャラクターデザイン:西田亜沙子
制作:オレンジ
さらに詳しい内容は、TOHOanimeチャンネルの「すぐわかる『宝石の国』でも分かりやすく紹介しているので、ぜひ併せてチェックしてみてください。
あらすじ
これは、成長の物語。
舞台は宝石の国。美しいこの国には、度々宝石たちを攫いに月人がやってくる。月人たちに対抗するため、宝石たちは武器を持ち、彼らと戦うことを余儀なくされた。
主人公は、宝石たちのなかでも最年少のフォスフォフィライト。通称フォスは、硬度三半と脆く、靭性も弱く戦闘には不向きだった。また、戦闘以外の事務仕事の適性もなかった。正真正銘の落ちこぼれのフォスに、三百歳を目前にやっと初めての仕事が与えられた。それは、「博物誌編纂」という仕事である。地味な仕事に不満を抱くフォスであったが、仕事をきっかけに彼は思ったより複雑に絡まる世界の仕組みを知り、さまざまなことを経験する。そしてしだいに大きなうねりのなかに飲み込まれてゆく…。
感想
まずは『宝石の国』のざっくりとした感想を述べていきます。
美麗な映像とキャラクターに「眼福」の一言
アニメ『宝石の国』の大きな魅力は、美麗な映像とキャラクターでしょう。ストーリーに少しダークな面や悲しい展開もありますが、まずは作品世界の没入して「眼福」な体験を味わってほしいです。
まず、主な登場人物が宝石たちで、彼らはとても美しく魅力的な容姿をしています。つるつるとなめらかな髪の毛の質感に思わずうっとりしてしまいます。原作も同様に美麗な作画で素敵ですが、アニメだとより宝石たちの美しさが際立つように感じられます。
また、宝石たちは生身の人間と異なり、身体が破損しても出血しません。欠けた部分が宝石の断面のように光り輝くので、戦いで負傷してもグロテスクにならず、(とても可哀想なのですが・・・)それはそれでとても美しいんですね。
そのような理由で、ダークな展開や残酷なシーンでも宝石という資質から美しく描かれるのが、この作品が「鬱くしい」といわれる所以の一つでしょう。
宝石たちを通して考えさせれる「人間」の存在
先に述べたとおり、登場人物の大半は「宝石」であり、作中に今のところ「人間」は登場しません。そもそも、作品の舞台が、人間が滅んでから多くの時間が経過した世界という設定です。
そのため、人間と似た外見をした宝石たちも、人間とは異なる生物です。しかし作中の宝石たちや月人、「肉の者」と呼ばれるアドミラビリスといった生物たちは、太古の昔人間が滅んだ際、バラバラに散った断片と考えられています。
そのため、人間とは異なる宝石たちにも、「人間のような部分」と「人間とは異なる部分」が混在しています。人間との共通点や、異なる点を見つけるたび、「人間とは何か」について考えさせられるのがこの作品の面白い部分だと感じました。
宝石の人間の違い
例えば宝石たちは不死身で、身体をバラバラに破壊されても、すべてを寄せ集めたら再び生命を取り戻すことができます。これは、人間とは異なる大きな要素でしょう。
作中で、医療事務(破壊された宝石たちの修復など)を担当するルチルは、そんな宝石の性質に対し、「だから私たちは何事も諦められない」と述べてます。このように、死の概念がなく、永久に生き続けられる宝石たちにとって、諦められないことが多いのです。
そのため、月人たちに攫われた同胞たちに対しても、諦めることができない。彼らの破片を集めれば再び命を吹き返すことができるからです。人間は一度死んだら生き返ることはできません。
人間に似た見た目をしている宝石たちではありますが、あまりに「命」の捉え方が違うというところが興味深く、そして人間の「死」についても深く考えさせられます。
宝石と人間の共通点
反対に、宝石と人間の共通点というのも存在します。
それは、「感情」があることです。宝石たちは破損しても血が流れず、食事もせず、何より現実離れした美しい容姿なので、無機質な印象を受けます。しかし彼らには、「嫉妬」や「羨望」「不安」「葛藤」などの感情があるように描写されています。
主人公フォスにしても、落ちこぼれではあるものの一際優しい性格に描かれています。息をするだけで毒を撒き散らす体質から宝石たちに疎外されているシンシャをどうにか救いたいと奮闘するのもフォスです。それは自分にだけ秘密を打ち明けてくれたシンシャに対し、何らかの特別な感情を抱き、「救いたい」と思ったからでしょう。
ほかにも、硬度10、エリート的存在のダイヤモンド族に属するダイヤも、同じダイヤモンド族で戦闘中は行動を共にするボルツに対して、複雑な感情を抱いています。宝石たちの中でも最強とされている、武術に長けたボルツ。ダイヤはボルツに劣等感や嫉妬に近い感情を抱いておりとても大切に感じているのに、一方で「ボルツさえいなければ」と相反する感情に悩まされることも。
こういった宝石の一面を見ると、とても人間らしさを感じます。綺麗な宝石たちの中にも、どろどろと渦巻く複雑な感情があるように見えます。
人間とは多くの面で異なるのに、それでも人間との共通点を感じられる。それが宝石の国のキャラクターが魅力的な理由でしょう。
宝石たちに「愛」はあるのか
そんな宝石たちに「愛」、またはそういった概念はあるのでしょうか。まだ作中でも「愛」またはそれに似た言葉が使われている場面はおそらくありません。ダイヤがシンシャに「フォスが好きなのか」と聞く場面はありますが、それと「愛」はまた別物だと感じます。
フォスが、宝石たちの教育者である先生に対し、「先生が大好きだから助けたいんです」というシーンもあります。しかし、これも「愛」とはまた別の、忠誠、または親への情愛に近いものに感じます。もちろんそれも愛だといえば愛なのでしょうが、どうにも作中で「愛」という言葉が使われないのが気にかかります。
もしかしたら宝石の国に、「愛」という言葉が存在しないのかもしれません。ダイヤがボルツへの感情をうまく表現できず、フォスに「この感情に名前をつけて」とお願いしましたが、それこそが「愛」なのかもしれません。
しかしまあ、こんなに宝石たちにとっての「愛」が気になってしまうのは、私が人間だからなのかもしれませんね・・・。
見どころ
次に、『宝石の国』の見どころを深掘りしていきましょう。
不死身の宝石たちから滲む希死念慮が「鬱くしい」
この作品の「鬱くしい」ポイントをもう一つ解説させてください。
それは、不死の存在である彼らから、「希死念慮」が垣間見えるときがあるからです。
例えば自らの体質で疎外されているシンシャは、いつしか「月人に攫われたい」と願うようになります。宝石たちにとって、「月人に攫われる」ということは、「死」に近い概念なのではないでしょうか。シンシャは「月には自分を必要としてくれる人がいるかもしれない」と言いますが、それもここではないどこかへ逃避したい願望そのものあり、破滅的なセリフのように感じます。
フォスにしても、自分自身の命にそこまで執着がないように感じる場面もあります。アドミラビリス族の王、ウェントリコススに人質として月人に差し渡された時も、どこか諦念の滲む態度でした。それは、ほかの宝石たちに比べ能力が劣る自分自身の「存在意義」について考えた結果なのかもしれません。誰の役にも立たない自分はいなくなった方がマシだ、とでもいうようなフォスの態度には、希死念慮のようなものを感じざるを得ません。
このように、不死身の宝石たちが「死」を望むという展開そのものが、とても哀しく、でもどこか美しく感じるのがこの作品の見どころの一つだと思います。
可愛く凛々しいフォスフォフィライトの「成長」
ダークでしんみりしてしまう展開が多い『宝石の国』の中で、主人公フォスの可愛らしさは大きな癒しです。特に物語序盤のフォスは、幼さの残る表情や声、向こう水で大胆な発言、根底にある他者への優しさなど、愛すべきポイントばかりのキャラクターとしてとても魅力的に描写されます。
しかし、この作品でフォスはさまざまな経験のなかで身体の一部を犠牲にし、回を追うごとに姿形が変わっていきます。身体が犠牲になるたびに、アゲートや合金で補強され、フォスは強くなっていきます。
この作品は、「成長の物語」であることを謳っています。それがどこか皮肉のようにも感じるのは、フォスが成長していく場面に、常に犠牲が付き物であるということ。足を失い、腕を失ったフォス。腕を失い合金を結合させたばかりの頃、まだうまく腕を操れなかったフォスは同胞のアンタークチサイトを月人に奪われてしまいました。
当初あれだけ願っていた戦闘に参加できるようなっても、フォスの目に輝きは宿りません。強さを手に入れたフォス。しかしこれは「成長」なのでしょうか。難しいですね。
個性豊かで魅力的な宝石たち
作品の大きな魅力は、個性豊かの宝石たちです。
宝石たちは皆美しく聡明ですが、それぞれ個性があり、性格や戦い方も異なります。それぞれのキャラクターを知ることで、よりアニメを楽しめること間違いなしです。
個人的に推したいキャラクターは、双晶「アメシスト」です。美しい紫水晶で、剣の凄腕です。双晶なので、2人で1つという稀有な存在。一時期、フォスとコンビを組んでともに戦いに出るキャラクターです。とてものんびり、おっとりした性格ですが、戦いとなると一変し勇ましく戦うそのギャップにやられます。
他にも、生まれつき身体に穴が空いており、適合可能な鉱物素材をはめなければ活動できない「パパラチア」。性格が兄貴気質でとっても男前です。同胞を攫われたことにより月人を憎むようになりますが、新鮮な憎しみを忘れないために月人研究に勤しむ「アレキ」、戦闘狂のぼるつなど、個性は揃いの宝石たち。
ぜひ推しを見つけて楽しんでほしいです!(月人に攫われる危険性はありますが・・・)
『宝石の国』が楽しめる人の特徴
アニメ『宝石の国』が楽しめる人の主な特徴は、下記のとおりです。
- 美しい映像が好き
- ファンタジーが好き
- 綺麗なキャラクターが多く登場するアニメが好き
- 主人公が成長していくアニメが好き
- ダークな展開も受け入れられる
- CGアニメーションへの耐性がある
シリアスな展開はありますが、宝石たちは血が出ないため、負傷するシーンでも絵的には美しいです。ただ、主人公が犠牲をはらいながら成長していく姿がしんどかったりもするので、感情移入しすぎると3日くらい引きずるかもしれません。
まとめ
以上、アニメ『宝石の国』の考察や感想をご紹介しました。
原作を読んでいない考察ですので、あくまでアニメ版を観た人間の意見として受け入れてもらえると幸いです。
ちなみに、原作を読んでいないのには理由があります。アニメを全話観た時点で結構引きずってしまったのですが、原作で紐解かれる今後の展開はさらに過酷なもののようで・・・!今はまだ耐えられる自信がないので、ひとまず原作は見ないようにしています。
しかし、アニメを視聴し『宝石の国』の世界観にどっぷりとハマってしまったので、原作と向き合うのは時間の問題かもしれません。
願わくばアニメ2期をぜひやってほしいですね・・・!
ここまでお読みいただきありがとうございました!