こんにちは、映画監督志望の田中です。
毎日映画を観ている私が、おすすめの映画の見どころを感想をご紹介します。
今回取り上げるのは、2019年公開映画『トイストーリー4』。
これまでは作品の大まかな感想や見どころをご紹介してきましたが、今回この作品について語りたいのは衝撃のラストシーンについて。全シリーズ通して子供から大人まで老若男女に愛されるトイストーリーシリーズですが、「4」についてはなかなかに賛否両論分かれているご様子。
それくらい、今作のラストシーンは人びとの心に強く衝撃を与えたということで、ぜひこれを機に語っていきたい思います。
※作品の根幹に迫る大ネタバレがあるので観ていない人は要!注意です
目次
概要
おもちゃの世界を舞台に描く、ピクサー・アニメーションの言わずと知れた大ヒットシリーズ「トイ・ストーリー」第4作。
ボー・ピープが「トイ・ストーリー2」以来、19年ぶりに再登場を果たします。さらに物語の鍵を握る先割れスプーンのフォーキー、ふわもふコンビダッキー&バニー、アンティークのおもちゃギャビー・ギャビーといった個性豊かな新キャラクターたちも登場。
多くのピクサー作品でストーリーボードアーティストを担い、『インサイド・ヘッド』で脚本に参加したジョシュ・クーリーが長編初監督。第92回アカデミー賞で前作『トイ・ストーリー3』に続き、長編アニメーション賞受賞。
あらすじ
ウッディたちの新しい持ち主、ボニーは幼稚園の工作で作った先割れフォークのフォーキーを家に持ち帰る。
ボニーの今一番のお気に入りとなったフォーキーを仲間たちに紹介するウッディだったが、フォーキーは自分を「ゴミ」と認識し、ゴミ箱に捨てられるためボニーのもとから逃げ出してしまう。フォーキーを連れ戻しにいったウッディは、帰り道の道中でアンティークショップを見つけ、かつての仲間であったボー・ピープのランプを発見する。その一方、帰りの遅いウッディとフォーキーを心配したバズたちは2人の捜索に乗り出すが……。
衝撃のラストシーンについて
作品の概要を理解したところで、ラストシーンについて語っていきましょう。
ずばり、『トイストーリー4』のラストで、ウッディは持ち主ボニーの元から離れ、子供部屋のおもちゃたちに別れを告げることとなります。
「トイストーリー」のこれまでの概念を覆すラストに驚きが隠せず、しばらく現実を受け入れることができませんでした。
ラストシーンがショッキングだった理由
というのも私は「トイストーリー」シリーズ1作目、『トイストーリー』公開時は生まれて間もないながらトイストーリーに親しみ、2作目『トイストーリー2』は6歳と世代ど真ん中。トイストーリーと共に育ってきたいっても過言ではありません。
歳を取ってもウッディは私のおもちゃという認識がありました。そのため、ウッディが子供部屋から別れを告げたラストシーンは、絶対自分の元から離れていかないと思っていたおもちゃ(ウッディ)がいなくなってしまった虚無感が物凄かったのです。
しかし、よく考えたら私は大人になってからも、常にウッディを思い出していたでしょうか。大切にしていたでしょうか…。この気づきは、『トイストーリー4』のラストを考えるにあたりとても大切なことだと感じました。
「ウッディとの別れ」というラストには、さまざまなメッセージが込められています。この章で、ラストシーンまでの流れや映画を観た人の感想を確認し、ラストシーンについて考えていきましょう。
ラストシーンまでの作品全体の流れ
まずはラストシーンまでの作品全体の流れを見ていきましょう。『トイ・ストーリー4』は、前作『トイストーリー3』の1年後という設定です。
1
ウッディとバズら仲間たちは、新たな持ち主であるボニーと日々暮らしています。
彼ら、特にウッディは「おもちゃに大切なことは子供のそばにいること」という考えを持っており、ボニーを見守ります。内気なポニーを心配しているウッディは、リュックに入りボニーの通う幼稚園へ忍び込みます。
幼稚園で人見知りを発揮し、友達を作れず落ち込んでいるボニーを見兼ね、ウッディは奮闘します。そのおかげもあって、ボニーは工作をして「フォーキー」を生み出します。
ゴミ箱に入っていた先割れフォークやモールなどで作られた「フォーキー」は、すぐにボニーのお気に入り「おもちゃ」となります。
2
フォーキーを新たなおもちゃ仲間として歓迎するウッディたちでしたが、どうやらフォーキーの様子がおかしい…。
ゴミ箱に入っていたゴミからできたフォーキーは、自分をゴミだと思っています。いくら説得しても、フォーキーはウッディ目を盗みゴミ箱へダイブしてしまいます。
そんななか、ボニー一家はキャンピングカー旅行に出かけることに。フォーキーを含む子供部屋のおもちゃたちも、旅行に同行することになります。
しかし移動中、フォーキーはついに逃亡してしまいます。ウッディはフォーキーを追いかけ、ボニーやほかのおもちゃたちとはぐれてしまいます。
3
ウッディはフォーキーを連れ戻す道中、たまたま見かけたアンティークショップで、かつての子供部屋おもちゃ仲間だったボー・ピープの電気スタンドを見かけるのです。
ウッディは、かつて淡い想いを寄せていたあのボー・ピープがいるかもしれない…と、フォーキーとともに店内に足を踏み入れます。
アンティークショップの中で出会ったのは、アンティークのプルストリング人形「ギャビー・ギャビー」でした。ギャビー・ギャビーにはもともとの製造欠陥があり、紐を引いてもウッディのように声を発することができません。
アンティークショップの中に長年閉じ込められているギャビー・ギャビーですが、欠陥さえ直り声を取り戻すことができれば、子供のおもちゃとして引き取ってもらえると信じています
4
ギャビー・ギャビーと同様に、紐を引っ張ることで声が出るプルストリング人形のウッディは、声を出すための部品「ボイスボックス」をギャビー・ギャビーに奪われそうになります。
ウッディはギャビー・ギャビーから必死に逃げますが、そこにアンティークショップの店主の孫娘、ハーモニーがやってきます。
ひょんなことからハーモニーに拾われたウッディは、店の外に連れて行かれ、フォーキーと離れ離れに…。
5
一方キャンピングカー内。
ウッディとフォーキーの帰りを待つおもちゃたちは、二人がなかなか戻ってこないことに不安を募らせていきます。
ウッディの相棒であるバズは、2人を探しに外へ出ていくことに。
車の外は移動式遊園地。たまたま人間に見つかってしまったバズは、射的ゲームの景品として壁にくくりつけられてしまいます。そこでバズは、同様にゲームの景品としてくくりつけられているダッキー・バニーに出会います。2人は1等の景品として、3年の間そこにいた人形でした。
ダッキーとバニーの力を借り脱出に成功したバズは、2人とともにウッディを探しに出ます。
6
そのころウッディ。
ハーモニーにより砂場へと連れて行かれ、困り果てていました。
しかしそこで、かつての仲間であり想い人であるボー・ピープとの運命的な再会を果たします。
ボロボロになったボー・ピープは、なんとか売られたアンティークショップから逃げ出して、自由の身になったおもちゃでした。
かつてはスカートを履いて華やかな姿だった彼女は、今やパンツスタイルで強く、自立した女性へと変わっていました。
ウッディはボー・ピープを説得し、フォーキーを救うために再びアンティークショップへ向かいます。
7
ウッディとボー・ピープは、道中でバズやダッキー・バニー、スタントマンのおもちゃ、デューク・カブーンらと合流します。
全員で力をあわせ、ギャビー・ギャビーからフォーキーを取り戻そうとしますが、計画は失敗してしまいます。
この作戦は無謀だというボー・ピープ。ウッディは彼女に対し、「捨てられたおもちゃ」だから「大切にされているおもちゃ」のフォーキーの気持ちが分からないと完全な失言をしてしまいます。
ボー・ピープはウッディの発言に傷つき、バズたちも無茶な作戦を決行するウッディのもとから去っていきます。
8
仲間を失い、独りぼっちになったウッディ。
ギャビー・ギャビーからの「ボイスボックスを渡してくれればフォーキーを返す」という提案を受け入れます。
声を取り戻し。子供と遊ぶことに希望を見出すギャビー・ギャビー。早速、理想の持ち主ハーモニーの気をひこうと、声を出します。
しかし、ハーモニーは、ギャビー・ギャビーを持ち帰ろうとはせず、「いらない」と置いて行ってしまいます。
ウッディは、悲しむギャビー・ギャビーを励まし、一緒にボニーと帰ろうと提案します。
9
そんななか、ボニーがたまたまアンティークショップを訪れます。ウッディは、なんとかフォーキーをボニーのリュックに戻すことに成功。
ウッディは、戻ってきたボー・ピープ、バズらとともに急いで遊園地へと向かいます。
一方車に戻ったボニーたち。
ボニーはフォーキーを見つけたことに安心し、ウッディたちがいないことには気づかず出発してしまいます。
フォーキーからウッディらが遊園地に向かっていることを聞いた子供部屋のおもちゃたちは、無謀な運転作戦を決行し、なんとかして車を遊園地へと向かわせます。
10
遊園地に戻った一ウッディら。ギャビー・ギャビーは、遊園地で迷子になり泣いている女の子を見つけます。
ギャビー・ギャビーは子供を助けたいと思いながらも、ハーモニーに「いらない」と言われたトラウマで葛藤します。
ウッディたちはギャビー・ギャビーの背中を押し、女の子に拾ってもらえるよう応援します。
勇気を出して女の子のもとへ歩み寄るギャビー・ギャビー。無事、女の子はギャビー・ギャビーを見つけ、彼女を拾います。ギャビー・ギャビーを拾ったことで勇気が出た女の子は、無事両親と再会することができました。
こうしてギャビー・ギャビーは念願の持ち主の子供と出会うことができ、ウッディたちのもとを去ります。
ラストシーン ウッディの決断
無事、フォーキーらが乗ったキャンピングカーがウッディらのもとに迎えにきました。
ウッディと再会でき嬉しそうなおもちゃたちでしたが、ウッディからは迷いが見えます。
そんなウッディの表情を見たバズは、ウッディがボー・ピープと一緒にこの場所に残りたいのだと理解します。
バズはウッディに「ボニーの事は心配いらない」と声をかけます。
それに安心したウッディは、バズやおもちゃたちと別れを告げます。
ラストシーンについての感想
以上、作品の流れを紹介しました。
ウッディが子供部屋に別れを告げた経緯には、かつての想い人であり、今や野生のおもちゃとして強く生きている「ボー・ピープ」との出会いがあったということです。
また、かつての持ち主とアンディと違い、現在の持ち主ボニーにはあまりかまってもらえなかったウッディ。自分が幸せに生きられる道を模索してたともいえます。そこでボー・ピープと出会い、自分が生きていく環境について見つめ直すきっかけになったともいえます。
多く予想される視聴者の感想は、おそらくこの二つだと思います。
- 「おもちゃにとって大切なのは子供のそばにいること」というポリシーは?
- ボニーに必要とされなかったらウッディにとって、これが最善の決断なのではないか
私もこの二つの思いがごちゃごちゃになり、しばらく食欲がなくなりました。(※映画に感情移入するタイプです)
一時期は、『トイストーリー4』の存在をなかったことにしたいと思ったほどです。私にとって「トイストーリー」は「3」までである、と暗示を込めた日もありました。
しかし、この「ウッディ・ロス」を解消するには、この『トイストーリー4』という作品に込められたメッセージをしっかり理解するほかないと思うようになりました。そうです、間違いなくこのラストシーンには意味があるのです。
では、実際に映画を観た人の感想を見ていきましょう。
映画を観た人の感想
実際に、『トイストーリー4』のラストシーンについて、映画を観た人の感想を見ていきましょう。
- 3で綺麗に終わったからこそ観る気がしなかったが、実際観たら感動して涙が止まらなかった
- トイストーリーと共に大人になり、歳をとった。この映画は子供向けではない。常に考え方や選択を変えることはできるいうメッセージが感じられた
- ウッディはバズや皆と一緒に子供部屋にいて欲しかったが、それはエゴであって、子供部屋に別れを告げた今のウッディは幸せなのかもしれない
- 辛すぎる結末を今すぐにでも忘れたい
- 「3」の終わり方が好きなので、「3」で終わらせて欲しかった
- 全シリーズで一番見入ったストーリー展開だった
- 「生まれた意味は1つじゃなく、幸せではないのなら環境を変えればいい」という哲学を感じた
- これまでのシリーズで一貫していた「おもちゃと子供の関係性」がブレてしまったように思う
まさに賛否両論。好意的な意見と、ラストにショックを受けた意見に綺麗に分かれていますね。
ラストシーンに込められた思い
これまでウッディを失ったことに我を忘れていた私ですが、映画を観た人の冷静な感想に、すっと自我を取り戻すことができました。特に響いたのはこの感想です。
「トイストーリーと共に大人になり、歳をとった。この映画は子供向けではない。常に考え方や選択を変えることはできるいうメッセージが感じられた」
そうです。これまでトイストーリーを親しみ続けた視聴者も、共に年を取り大人になっていくのです。
子供部屋のおもちゃとして子供のそばにいることが「当たり前」であったはずのウッディが子供部屋を去ったのは、多くの視聴者にとってショッキングな事実であったと思います。しかし、それだけ衝撃があったというのは、そのウッディの決断が予想だにしたかったものだということ。
つまりそれは、その人の人生は、常に予想外の方向へ変えていくことができるという希望であるともいえるのです。
まとめ
以上、『トイストーリー4』のラストシーンについて熱く語っていきました。
記事を通して感じたことは、これは子供達に向けた映画であると同時に、トイストーリーと共に歳を重ねた大人たちに向けた物語でもあるということ。
そして、ウッディとの別れというラストは「あなたの人生も、いつだって良い方向へ変えていける」というポジティブなメッセージとして受け取ることもできるという着地におさまりました。
すっきりしたので、今日はよく眠れそうです。
しかし、しかしです。もし夢にウッディと過ごした子供部屋のあの頃が出てきたとしても、それは許して欲しいのです。あの頃おもちゃが大好きな子供だった私を、今だけは許して欲しいのです…。
ありがとうございました。未来はいつも自分次第で変えていける!
「無限の彼方へさあ行くぞ!」
※2022年7月『バズ・ライトイヤー』公開。とても楽しみです。