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映画『浮雲』感想。いつの時代も変わらない、男と女の終わらない業(カルマ)

こんにちは、映画好きライターの田中です。

ほぼ毎日映画を観ている私が、おすすめしたい映画の見どころや感想をご紹介。

本日取り上げるのは、1955年製作、名匠・成瀬巳喜男の名作メロドラマ『浮雲』です。

令和の今見ても共感できる、男と女の付かず離れずの恋愛模様が生々しく描かれた作品です。

※ネタバレ含みます

概要

成瀬巳喜男が林芙美子の同名小説を映画化。脚本を水木洋子、チーフ助監督を若き日の岡本喜八が担当した。ヒロインのゆき子を高峰秀子、相手役の富岡を森雅之が好演。

日本映画を代表する名作メロドラマ。戦後の荒廃した日本を舞台に、腐れ縁の男女の愛の顛末を描く。

映画『浮雲』の配信状況

2023年11月20日現在、以下の動画配信サービスで視聴できます。

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あらすじ

戦時下の昭和18年。農林省のタイピストとしてインドシナに渡った幸田ゆき子は、技師の富岡兼吾と出会う。

富岡は日本に妻がいたが、2人は異国の地で恋に落ちていく。

終戦後、富岡はゆき子に妻と離婚して一緒になる約束をして、日本へ戻る。しかし、遅れて帰国したゆき子が東京の富岡の家へ訪ねると、富岡はいまだ妻と暮らしていた。

富岡に失望したゆき子は、別れを決意するが、結局2人は離れることができず、不倫の関係をずるずると続けていくことに…。

映画『浮雲』の見どころと感想

映画『浮雲』の見どころや感想をご紹介します。

繰り返される男女の業

本作は、異国で情熱的な恋に落ちた男女が、敗戦後のぱっとしない日本に戻り、別れきれずにずるずると冷めた関係を続けていく煮え切らないメロドラマです。

そのため、最後までもやもやが続き、一度たりとも晴れやかな気持ちになることはありません。

しかし、その煮え切らなさが本作の最大の特徴であり魅力であるといえるでしょう。

繰り返される男女の業が、なんとも生々しくリアルなんです。実際に、こんな風に関係を続けてしまっている人びとは多いことでしょう。

そのため、レビューを見るとある一定数からは怒涛の共感を得られ、それ以外の方は同じことを繰り返す男女のばかばかしさを俯瞰して楽しんだ勢と、とにかく湿っぽくて苦痛なのに何故だか惹き込まれて最後まで観てしまった勢に分かれていた印象です。

つまり、実は誰もがついつい夢中になって観てしまう超名作ということになりますよね。

本当に不思議な魔力、引力のある映画で、同じことの繰り返しだと分かっているのにゆき子と富岡の顛末が気になって仕方がない。恐ろしい映画です。

なぜしんどいのに惹き込まれてしまう?

まず、時代を超えて本作に夢中になってしまう人が多い理由は、この映画が別れられない男女という、極めて不変的なテーマを扱っているからでしょう。

いつの時代も人は恋をし、恋の終わりを経験します。恋の終わりを受け止めきれず、足掻いてしまう人だって多いことでしょう。

男と女、というよりも人間と人間の関わり合い、そしてそれに伴う喜びや切なさは、時代問わず不変的なもの。そのため、多くの人が煮えきれないこの作品の虜になってしまうんです。

レビューのなかには、「今は二人に共感できないけど、大人になったら気持ちが分かる時がくるかもしれない」という意見も多くありました。

そういう方は、自分自身が煮え切らない恋を体験したとき、きっと本作を思い出すのではないでしょうか。

また、甲斐性のない富岡という男に依存し続けるゆき子の生き方が、見てられないのに目を逸らせず引き込まれてしまったという意見も多々ありました。次項では、そんなゆき子の人物像について深堀りしていきましょう。

諦められないゆき子

本作の主人公、ゆき子。彼女はどういった人物なのでしょう。

まず、ゆき子が富岡と出会うことになるインドシナに渡った理由は、義理兄との不倫関係から逃れたかったからなのです。映画では詳しく描写されていませんが、小説では述べられているとのこと。(小説を読んだのが太古昔なので、私はよく覚えていません。しかし、ネットで調べるとどうやらそうらしいです。)

男との不毛な関係から逃れたかったゆき子は、異国の地でこれまた既婚者の富岡と、不毛な恋に落ちてしまいます。

通常であれば躊躇すべき不倫関係に、ゆき子があれよという間にハマってしまったのは、異国のムードがそうさせただけではなく、義理兄との関係で拗らせてしまったからであると考えられます。

その後敗戦後の日本に戻ったゆき子は、「日本に帰ったら一緒になろう」という約束を果たさず妻と何食わぬ顔で暮らす富岡に失望しつつも、関係を切れないでいます。

富岡を引きずりつつも、街で出会った米兵の娼婦になっていたことから、男性依存に陥っているようにも感じました。

それでもゆき子は、こと「富岡」という男に執着し、執着し、執着し続けます。その執念の凄まじさが、本作から誰もが目が離せない理由であると感じます。ゆき子の執着の理由は、また後述するといたしましょう。

次項では、そんなゆき子に執着されまくる富岡という男について深掘りしていきます。

優柔不断な富岡

富岡は、農林省で技師として働いており、インドシナに渡った際にゆき子と出会いました。

その時、富岡にはすでに妻がいました。それだけでなく、インドシナの女給の女性とも、おそらく何かあったように見えます。

ゆき子が初めて富岡に会ったときから、富岡には女の影がありまくりだったのです。それを分かっていても、ゆき子は富岡に惹かれる気持ちを止めることができませんでした。

その理由は本当によく分かりませんが、「タイプだった」「色気があった」「危険な香りに惹かれた」といったところなのでしょうか。

富岡の方はというと、ゆき子を「可愛い子だな」くらいな感じで気に入った程度に見えます。もともと女たらしの性格なのでしょう。ゆき子に恋をし、焦がれているとまではいかないように見えました。たくさんいる美しい女の一人、といったところでしょうか。

そして富岡は、「目の前にいる人に優しくしたい」という厄介な性格であるようで、突然会いに来たゆき子を咎めることもせず、常に優しく接します。さらに妻にも、伊香保温泉で出会う女給のおせいにも、同じように優しく接します。

そうした思わせぶりで優柔不断な富岡の態度が、女を狂わせてしまったのかもしれません。

二人を繋ぎ止めるのはインドシナでの思い出

ゆき子と富岡は、帰国後倦怠期を迎えたにも関わらず、ずるずると関係を続けていきました。その間に富岡の妻が死に、浮気相手のおせいが死にました。

明らかに負の業を抱えてしまっているのに、それでも完全に関係が切れることはなかった腐れ縁の二人。

では、二人を繋ぎ止めていたものとは、いったいなんだったのでしょうか。

それはおそらく、インドシナでの華やかな思い出でしょう。

敗戦前、栄華を誇っていたインドシナで、日本では住めないような豪邸に住み、毎晩酒を飲んで遊んだ時代。二人は、その幸福で、戦後のことなど考えずのん気でいられた時代込みで相手を好きだったのでしょう。

相手を思い出すたび、それに付随して楽しかったインドシナの光景まで蘇ってくる。だから二人とも、相手を思い出さずにはいられなかった。

異国の地の思い出のみで、繋がった二人。敗戦後の日本で、うまくいくはずがなかったのです。

燃え上がる男女の関係、そして戦前の幸福とは、なんと刹那的なものだったのでしょう。どうにも切なくてやりきれないですが、これが現実というもの。

そして、ゆき子は最後まで現実を受け入れられず、愛する男に看取られて死にました。もしかしたら、ゆき子にとってそれは一番幸せな最期だったのかもしれません。そう思うと、少しは救われるますね。少しは…。

映画『浮雲』が楽しめる人の特徴

映画『浮雲』が楽しめる人の主な特徴は、下記のとおりです。

  • 付かず離れずのメロドラマが好き
  • 悲恋ものが好き
  • 白黒映画が好き
  • 女優・高峰秀子が好き
  • 成瀬巳喜男作品が好き
  • 昔の恋人を忘れられない
  • さまざまな地を旅する映画が好き

映画『浮雲』が好きな人におすすめの映画

ここでは、映画『浮雲』が好きな人におすすめしたい映画をご紹介します。ぜひ併せてご覧ください!

めし

大恋愛の末結婚した岡本初之輔と、三千代。二人は慎ましい生活を送るなか、いつしか夫婦でぶつかりあうことも増えていった。

そんなある日、東京から家出をした姪の里子がやってくる。彼女は奔放な性格で、夫婦の間にささいな波紋を生み出す…。

朝日新聞連載中に絶筆となった林芙美子の原作から『哀愁の夜(1951)』の井手俊郎と『少年期』の田中澄江とが、共同で脚本を執筆。成瀬巳喜男が監督に当っている。出演者は、『死の断崖』の上原謙と島崎雪子、『麦秋』の原節子と杉村春子ら。

秋津温泉

戦時中、生きる気力を無くした青年は、死に場所を求め秋津温泉までやって来た。しかし彼は結核に冒され、自殺する事もままならず温泉宿で倒れてしまう。そんな彼を看病したのは、宿の若い娘だった。青年は、終戦の玉音放送に涙を流す娘の純粋さに癒され、生きる気力を取り戻していく。回復した青年は都会へと戻っていくが…。

男と女、美しい四季を背景に描かれる、妖しい情念の戯れ。吉田喜重(監督)×岡田茉莉子コンビのきっかけとなった記念碑的作品。

放浪記

昭和初期、林ふみ子は行商をしながら母親と駄菓子屋の二階で暮らしていた。

八歳の時から育てられた父親に金を無心されるふみ子に、隣室の印刷工・安岡は同情し思いを寄せる。しかし初恋の人を忘れられないふみ子は、安岡の好意を受け入れない。

やがて、生活苦からカフェの女給となったふみ子。ふみ子の詩を読み、同人雑誌の仲間になるよう勧めた詩人兼劇作家の申し出により、ふみ子は伊達の下宿に移る。しかし、新劇の女優であり詩人の日夏京子が、伊達の下宿へ押しかけてくる。そのことに憤然としたふみ子は下宿を飛び出す。その後、ふみ子の詩が新聞で評価されるようになると、伊達と別れた京子とふみ子は何の因果か手を取り、二人で本を出版するようになる。そんなある日、「太平洋詩人」の白坂と京子がふみ子を訪ねて来る。そして、「女性芸術」でふみ子と京子の詩、どちらか一篇を掲載すると告げる…。

東宝創立30周年記念映画。林芙美子原作。『旅愁の都』の井手俊郎と『女ばかりの夜』の田中澄江が共同で脚色。成瀬巳喜男が監督した文芸もの。

まとめ

以上、映画『浮雲』の感想や見どころをご紹介しました。

個人的には、史上最高のメロドラマ。ずっと色褪せない引力のある名作だと思います。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!