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【ネタバレあり】映画『フランシス・ハ』の感想と見どころ。老けてないけど若くはない、27歳の劇的に変わらない日常

こんにちは、映画好きライターの田中です。

ほぼ毎日映画を観ている私が、おすすめしたい映画をご紹介します。

今回取り上げるのは、2014年公開の映画『フランシス・ハ』です。

年齢も仕事も恋愛も中途半端、ちょっと冴えない女性フランシスの劇的に変わらない日常を描いた作品です。

今回は、そんな『フランシス・ハ』の見どころや感想をお伝えしたいと思います!

※ネタバレ含みます

概要

監督は、アカデミー脚本賞にノミネートされた監督作『イカとクジラ』のほか、『ライフ・アクアティック』『ファンタスティック Mr. Fox』などのウェス・アンダーソン作品の脚本にも参加しているノア・バームバック。ニューヨークを舞台に、モダンダンサーを目指す主人公フランシスのうだつの上がらない毎日を、彼女を取り巻く奇妙な友人関係含めいきいきと描いたドラマ。

主題歌はデビッド・ボウイの「モダンラブ」。『ローマでアモーレ』などに出演した女優、映画監督のグレタ・ガーウィグが主演・共同脚本を務めた。

『フランシス・ハ』の配信状況

2023年7月10日現在、以下の動画配信サービスで視聴できます。

サービス名 視聴状況 初回お試し
プライム・ビデオ 丸

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30日間無料

Netflix 丸

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U-NEXT バツ

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Hulu バツ

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ABEMA バツ

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2週間無料

DMM TV バツ

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TELASA バツ

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2週間無料

あらすじ

ニューヨークのブルックリンで、親友ソフィーとルームシェアをしながら楽しい毎日を過ごしていた27歳の見習いモダンダンサー、フランシス。

しかし、なかなかダンサーとして芽が出ず、彼氏とも別れ、ソフィーとの同居も解消となってしまう。フランシス・ハ自分の居場所を探し、ニューヨーク中を転々とすることに。

周りの友人たちが次々と身を固めていき落ち着いていき、焦りを感じたフランシスは、少しずつ自分の人生を見つめ直していく…。

『フランシス・ハ』の感想

まずは、映画『フランシス・ハ』のざっくりした感想をお伝えします。

微妙な年齢、27歳

気付けば27歳。ダンサーを夢見る自分と周囲の現実とのギャップは広がり、焦燥感に狩られながらも、自分自身の現状を受け入れて歩き続けるフランシス。

27歳。

なんとも絶妙な年齢です。老けてはいないけど、若くもない。

仕事が安定し出したり、結婚したりと、周囲がどんどん落ち着き始める時期でもあります。

地に足付けて行かなくてはいけないようにも感じますが、まだ20代という余裕もあり、学生気分が抜けなかったり、夢を諦めきれずもがいたりしている人も多くいることでしょう。

子供のままじゃいられないけど、大人になりきれない。フランシスは、そんな27歳のドツボにハマっていくわけです。

これは、現在27歳、またはかつて27歳を経験した多くの人間が共感する状況でしょう。

等身大の自分

本作では、等身大の自分でいることの難しさを痛感します。

特に年齢を重ねれば重ねるほど、無意味なプライドが邪魔をし、本当の自分を曝け出すことができなくなってしまう。

そんな、中身はまだ子供だけど、外聞はしっかりしなくてはいけない27歳のおぼつかなさが、フランシスを通してたっぷりと描かれています。

フランシスは、見栄のために嘘をついてしまったり、背伸びして大人ぶってしまうことがあります。しかし作中での彼女の描かれ方は、「嘘をつく不誠実な人」というわけではなく、「可愛らしくてちょっとダメな人」なんです。

誰しもが苦々しくも共感できてしまう27歳の葛藤を背負ったフランシスは、視聴者にとって、応援すべき憎めないキャラクターとして魅力的に描かれているわけですね。それがすごく素敵だと思いました。

モラトリアムは終わっていない

本作には、「最後のモラトリアム」というテーマもあるように感じました。

まだ子供のまま、自由を謳歌していたいフランシス。もちろん周囲を見渡せば、一緒に遊んでいた友人たちは徐々に落ち着き始めている。いつまでもこのモラトリアムは続かないと、分かっている。

それでも、今はこのモラトリアムを享受したい。

だってまだ結婚も出産もしたくないし、仕事にも縛られたくない。したいと思ったことも今すぐしたい。人生に折り合いを付けたくない。

そんなフランシスの「もがき」は、鮮烈な輝きを放っているようにも見える。それができずに落ち着いてしまった人々からすれば、羨ましくも映る。

彼女は作品終盤で、少しずつ現状を受け入れ、自分の人生に折り合いを付け始めます。それでも、「もがき」を完全には諦めていない。その事実がほんのりと伝わるラストは、圧巻でした。

『フランシス・ハ』の見どころ

次に、『フランシス・ハ』の見どころを深堀りしていきましょう。

憎めないフランシスの自然体な姿

先述したように、本作の主人公フランシスは、痛々しくて危なっかしいけどこか憎めない、魅力的なキャラクターとして描かれています。

年齢も仕事も恋も、すべて中途半端なフランシス。

お金もないのに衝動的にクレジットカードでフランス旅行。しかし束の間のバカンスはぱっとせず、不完全燃焼で終わって帰ってくる。

「老け顔」と言われたりもしたけど、中身は割と幼稚で、真っ直ぐだけど大雑把で、落ち着きがなくて空気が読めなくて、極め付けは見栄っ張り。

詰んでる感じのフランシスですが、思春期の男の子のような可愛らしさがあり、応援せずにはいられないのです。

それは、フランシスがいつも自然体の姿を見せてくれるからでしょう。

背伸びをしてしまうところですら、彼女にとっての自然体なのです。考えてもみてだくさい。大人になったら、「背伸び」をすることすら自意識が芽生えて、なかなかできなくなります。どうにか相応の自分に見られるよう、振る舞うことしかできなくなるのです。

やっぱり、自分の思うがままに生きているフランシスには、一生憧れ続けてしまうかもしれません…。

劇的には変わらない日常。それでも少しずつ好転

『フランシス・ハ』の魅力は、劇的には変わらない日常が続いていくことの、途方もなさと、安心感にあると感じました。

このフランシスの物語は、結局思い描いた未来とは別の形で収束を迎えます。劇的なエンディングとはいえません。しかし、少しずつ好転している気もする「やや勝ち」の状態です。

「思ったのと違うけど、これはこれでありかもしれない」

そういうラストには、不思議な伸びしろがあり、希望がある。これで終わりじゃなくて、まだまだ続いていく安心感。そして私たちが干渉することができない未来でフランシス・ハフランシスは、やっぱり楽しく生きているかもしれない。

映画の続きをそうやって想像できることは、ものすごく幸せなことなのではないかと思うのです。だから、私にとって本作は最高のハッピーエンドなのです。

粋なラストシーンに思わずにっこり

やはり、ラストシーンを触れずして感想を終わることはできないでしょう。

物語のラスト。フランシスはニューヨークに戻り、再度新しい生活を始めます。一人暮らしの新しいアパートに引越したフランシスは、郵便受けの名前プレートを入れるところに、手書きのネームプレートを入れようとします。

彼女の名前は「Francis Halladay」。

しかし、ネームプレートはサイズが合わず、全部入り切りませんでした。仕方なくプレートを折り曲げていれたら、偶然「フランシス・ハ」になってしまった…。ちゃんちゃん。

そんな場面で物語の幕が下ります。

なんとも粋で爽快なラストシーンではありませんか。

新しい生活をスタートさせ、意気揚々とネームプレートを作成する。しかし、全部入り切らなかった。これまで散々描写されたフランシスの愛らしさと愚かさを、ぎゅっと詰め込んだようなシーンで、思わず拍手喝采してしまいました。

『フランシス・ハ』が楽しめる人の特徴

映画『フランシス・ハ』が楽しめる人の主な特徴は、下記のとおりです。

  • 自分の人生に悩んでいる
  • 30歳手前の年齢
  • 周りから取り残されている焦燥感がある
  • 非モテ
  • 友達に恋人ができて落ち込んでいる
  • 淡々とした映画が好き
  • ゆっくり一人で映画を観たい
  • ちょっとだけ元気をもらえる映画が観たい

『フランシス・ハ』が好きな人におすすめの映画

ここでは、映画『フランシス・ハ』が好きな人におすすめしたい映画をご紹介します。ぜひ併せてご覧ください!

レディバード

舞台はカリフォルニア州、サクラメント。厳格なカトリック系高校に通うクリスティンは、ニューヨークの大学への進学を夢見ていた。自身を「レディ・バード」と称する17歳のクリスティンは、友人や恋人、家族との関係に悩みながら、高校生活最後の1年を過ごす…。

『フランシス・ハ』『20センチュリー・ウーマン』などで知られる女優グレタ・ガーウィグが、自身の出身地でもあるサクラメントを舞台に、自伝的要素を盛り込んで描いた青春映画。『フランシス・ハ』や『ハンナだけど、生きていく!』などで脚本も手がけ、『Nights and Weekends』(日本未公開)では共同監督を務めたグレタガーウィグが、初の単独監督作としてメガホンを取った作品。

フランシス役を演じたグレタ・ガーウィグ初の単独監督作品です。

20代の痛々しさを描いた『フランシス・ハ』に対し、こちらは10代の痛々しさといきいきと描いています。

わたしは最悪

30歳を迎えたユリヤ。いくつもの才能を無駄にしてきたユリヤは、人生の方向性が定まらずにいた。年上の恋人、アクセルはグラフィックノベル作家として成功。近頃はしきりに身を固めたがっている。ある夜、パーティに紛れ込んだユリヤは、若く魅力的なアイヴィンと出会う。ユリヤはほどなくしてアクセルと別れ、新しい恋愛に身をゆだねる。そして人生の新たな展望を見いだそうとするが……。

『母の残像』『テルマ』などで注目される、デンマークのヨアキム・トリアーが監督を務める。2021年・第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて主演のレナーテ・レインスベが女優賞を受賞。2022年・第94回アカデミー賞では、国際長編映画賞と脚本賞の2部門にノミネート。

大人になることを迫られる年齢、人生を見つめ直し、紆余曲折あり葛藤したりもがいたり…。そんな女性を描いた『わたしは最悪』。ユリヤは、フランシスに負けず劣らずの危なっかしい痛々しさがあり、必見です。

汚れた血

ハレー彗星が接近し、酷い暑さに襲われた近未来パリでは、愛のないセックスにより感染する恐ろしいウイルスが蔓延していた。

閉塞感に苛まれるアレックスは、父の死をきっかけにある計画に加わり、年上の女性、アンナと運命的な恋に落ちる。若さゆえの激しい愛を鮮やかに描き出したラブストーリー。

レオス・カラックス監督による、「アレックス」という青年を主人公にした3部作の2作目。愛のないセックスで伝染する死の病「STBO」が蔓延する近未来のパリでの恋愛ドラマ。マルクの愛人アンナをジュリエット・ビノシュ、アレックスのガールフレンドのリーズをジュリー・デルピーが演じた。

『フランシス・ハ』の冒頭で、デヴィットボウイの「Modern Love」と共にニューヨークの街を疾走する、横スクロールのシーンが描かれます。このシーンは、『汚れた血』が元ネタです。

『汚れた血』では、ニューヨークを楽しそうに駆け抜けるフランシスと打って変わり、苦しみもがきながら近未来のパリを疾走する青年アレックスの姿を見ることができます。同じ音楽でもこんなに印象が変わるのか、とギャップを楽しむことができるでしょう。

まとめ

以上、映画『フランシス・ハ』の感想と見どころをご紹介しました。

27歳という微妙な年齢、フランシスの劇的に変わらない毎日を、モノクロで鮮やかに描いた本作。ぜひ27歳を迎えたタイミングや、人生を見つめ直したいときに観てみてくだい。

きっと自然体のフランシスに、少しだけ元気をもらえるはずです。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!