こんにちは、映画好きライターの田中です。
ほぼ毎日映画を観ている私が、おすすめしたい映画をご紹介。
本日取り上げるのは、『エドワード・ヤンの恋愛時代』。
『クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』でお馴染みのエドワード・ヤンによる2日間の群像劇です。
※ネタバレ含みます
目次
概要
『クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』『ヤンヤン 夏の想い出』で知られる台湾の不動の名匠、エドワード・ヤンが手がけた台北が舞台の青春群像劇。
1994年、金馬奨で脚本賞・助演男優賞・助演女優賞を受賞。第47回カンヌ国際映画祭に正式出品。第79回ベネチア国際映画祭にて、ワールドプレミア上映された4Kレストア版が2023年にリバイバル公開されました。
『エドワード・ヤンの恋愛時代』の配信状況
2023年8月30日現在、以下の動画配信サービスで視聴できます。
サービス名 | 視聴状況 | 初回お試し |
---|---|---|
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あらすじ
舞台は急速な西洋化と経済発展が進む、1990年代前半の台北。
企業を経営するモーリーは、会社の経営状況も、婚約者アキンとの仲も上手くいっていない。モーリーの会社で働く親友のチチは、モーリーの振り回され、恋人のミンとはケンカが絶えずにいた。そんなモーリーとチチを中心に、同級生や恋人、同僚など10人の男女が2日半で織りなす複雑な人間模様を描いた。
心に空虚感を抱える若者たちが、本当に求めていたものとは…?
『エドワード・ヤンの恋愛時代』の感想
映画『エドワード・ヤンの恋愛時代』の感想や見どころをご紹介します。
満たされない若者たちの群像劇
本作では、経済的には満たされているが、心が満たされない都会・台北の若者たちの悲喜こもごもが描かれます。
彼らは、お金もあるし、恋人や結婚相手もいる。それなのに常に満たされず、焦っていたり苛立ったりして相手を振り回してしまいます。
作中の人物たちが本当に求めているものはなんだったのか、考えさせられます。
経営者だったモーリーは最終的に会社を手放し、婚約者とも別れる決断をします。すべてを失ったようにみえるモーリーですが、清々しく輝いているように見えました。
モーリーは終盤、チチの恋人であるミンと一夜を過ごしたあと、彼に「愛しているか」と尋ねます。自分は与えないにも関わらず、相手からばかりもらおうとするモーリーの姿勢を、ミンは静かに責めます。
結局人は愛されたい生き物ですが、そのためには自分を相手と向き合い愛す必要があるということが分かるシーンでした。
モーリーとチチの友情が印象的
作中で印象的だったのは、学生時代からの友人、モーリーとチチの友情関係。
チチは学生時代からずっとモーリーと親友関係を続けており、大人になった今でもモーリーの会社で働いています。
しかし、現在は昔のようになんでも話せる仲ではなく、どこかギスギスしています。
それをチチは仕方のないことだと感じており、モーリーは寂しく思っているようでした。
そんな二人ですが、ポスターにもなった「プールでタバコを吸うシーン」はとても情緒的で、まだ二人の仲に絆が残っていることを感じさせました。
愛情にもさまざまあります。作中では主に男女の恋愛関係が描かれていましたが、モーリーとチチの関係性には、揺るぎない愛情があるように思いました。
人気者チチの「理解されない」苦悩
作中でチチは、「誰も自分を理解してくれない」ことに悩みます。
チチはいつも愛想が良く、誰に対しても平等に優しく接します。そんなチチは会社でも人気者ですが、一部の人からはそれは「フリ」だと言われてしまいます。
仕事を有利に進めるため、人間関係を良好にするため、笑顔を振りまいていると思われてしまうチチ。それが本当にただの善意だったとしても。
彼女も彼女で、奔放なモーリーとは違った難しい生き方をしていると感じました。
明らかに彼女の風貌はオードリーヘプバーンも意識しているようですが、『ローマの休日』で、国民の憧れの姿を維持し続けることに疲れてしまったアン王女にも重なりました。
ラスト、グッとくる展開
ラストのエレベーターシーンは素晴らしいすぎます。
長年付き合っている恋人同士のチチとミン。最近は言い合いばかりが続き、関係も良好とは言い難いです。
一時の慰めを求め、モーリーと身体の関係を持ってしまったミン。今のままではミンと良好な関係を築けないと悟ったチチ。
二人は別れてしまうんだろうなと思っていましたが、最後の最後にとてもロマンチックな大団円を迎えます。
文句なしにグッと来る、最高のラストシーンでした。
『エドワード・ヤンの恋愛時代』が楽しめる人
映画『エドワード・ヤンの恋愛時代』が楽しめる人の特徴は、主に下記のとおりです。
- 台湾映画が好き
- エドワード・ヤン作品が好き
- 長回しワンカットが好き
- 会話劇が好き
- 情緒的な映像が好き
- 群像劇が好き
- トレンディドラマが好き
- 恋愛映画が好き
- ハッピーエンドが好き
- ラストシーンが印象的な映画が好き
『エドワード・ヤンの恋愛時代』が好きな人におすすめの映画
『クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』は、エドワード・ヤンが手がけた台湾の若者たちの青春群像劇。1991年第4回東京国際映画祭で審査員特別賞受賞、ヤン監督の初の日本公開作品として92年に劇場公開されました。
1961年夏、少年がガールフレンドを殺害するという、台湾初の未成年殺人事件が起きました。その実話をもとに作られたのが本作です。
主人公を演じたのは、当時素人だったチャン・チェン。この映画には、上映時間が「188分」のものと「236分」の2バージョンが存在します。2016年第29回東京国際映画祭ワールドフォーカス部門では、デジタルリマスター版の236分バージョンがプレミア上映され、2017年には同バージョンが劇場公開となりました。
青春神話
急激な高度成長で、バブルに浮かれる台北の街。主人公は、受験間近の予備校生シャオカン。彼は、歓楽街で遊び回る若者、アツーやアピンに羨望を抱いている。そんなシャオカンはある日、ナジャ王子の生まれ変わりと占われる。そこから心機一転、夜の街にさまよい出るようになるが…。
※ナジャ…仏教の神、毘沙門天の第三王子の名前
『青春神話』は、台湾映画界の期待の新人、ツァイ・ミンリャン監督の第一作です。舞台は台湾の首都、台北。一人の予備校生と周辺人物の人間関係を通し、台湾社会の抑圧された社会を描く青春群像劇。92年中時晩報電影奨最優秀作品賞、93年東京国際映画祭ヤングシネマ部門ブロンズ賞、トリノ映画祭最優秀新人監督賞受賞。
ヤンヤン夏の思い出
舞台は台北。ヤンヤンは祖母と両親、姉とマンションに暮らすごく普通の少年。ところが叔父の結婚式を境にさまざまな事件が起こり始め……。
台湾の現代家族を取り巻くエピソードを同時進行させ、緻密な構成で描いていくエドワード・ヤン監督の「カップルズ」以来の家族劇。穏やかさのなかに緊迫感が同居した映像は、ヤン監督作品ならではの魅力が詰まっています。あらすじ
まとめ
以上、映画『エドワード・ヤンの恋愛時代』の感想や見どころをご紹介しました。
観賞後、なんだか寂しくなると同時に、生きる気力が湧いてくる本作。
「人と人は分かり合えない」という究極の真理を突きつけられるのにも関わらず、それでも分かり合おうと努力する人にはささやかな幸せが訪れるかもしれないと期待を持たせてくれる作品だと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
1960年代の台湾、台北。夜間中学校に通うスーは。不良グループ「小公園」に属するモーやズルたちとつるんでいた。スーはある日、ミンという少女に出会い恋をする。彼女は小公園のボス、ハニーのガールフレンドで、ハニーは対立するグループ「軍人村」のボスとミンを奪い合い、相手を殺して姿を消していた。ミンへ恋心を抱くスーだったが、ハニーが突然戻ってきたことからグループ同士の対立は激しさを増し、スーを巻き込んでいく…。