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【ネタバレあり】映画『欲望の翼』感想と見どころ。「忘れられない一分間」、あなたにはありますか?

こんにちは、映画好きライターの田中です。

ほぼ毎日映画を観ている私が、おすすめしたい映画をご紹介。今回取り上げるのは、1990年製作、ウォンカーウァイ監督の『欲望の翼』です。

今回は、映画『欲望の翼』の感想や見どころを述べていきたいと思います。

※ネタバレ含みます

概要

ウォン・カーウァイ監督が1990年に手がけた長編第2作で、1960年代の香港で若者たちが織り成す恋愛模様を疾走感あふれる映像美で描き、「ウォン・カーウァイ」の名を一躍世界に知らしめた青春群像劇。

キャストにはレスリー・チャン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、トニー・レオン、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュンら香港映画界を代表する人気スターが集結。日本初公開は92年。2018年2月、Bunkamuraル・シネマほかにてデジタルリマスター版が公開。

映画『欲望の翼』の配信状況

2023年7月31日現在、以下の動画配信サービスで視聴できます。

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U-NEXT 丸

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あらすじ

ヨディはサッカー場で売り子をしていたスーに声をかけ、ふたりは恋に落ちる。しかしヨディは、自分が実の母親を知らないことに対し、複雑な思いを抱えていた。スーと別れたヨディは、ナイトクラブでダンサーとして働くミミと一夜を共にする。部屋を出たミミは、ヨディの親友サブと出くわし、サブは彼女に一目ぼれする。夜間巡回中の警官タイドはスーに思いを寄せるが、スーはヨディのことを忘れられずにいた…。

映画『欲望の翼』の感想

まずは、映画『欲望の翼』のざっくりした感想を述べていきます。

忘れられない1分間について考える

本作は、レスリー・チャン演じるヨディが、マギー・チャン演じるスーに声をかける印象的なシーンから始まります。

要するにナンパをするわけですが、ヨディはなかなか珍しい言い回しでスーを口説くわけです。

「1960年4月16日3時1分前、君は俺といた。この1分を忘れない。君とは、”1分の友達”だ。この事実はもう否定できない。」

キザと言いますか…。しかし、「1分の友達」とは、一度聞いたら忘れられない言葉です。実際にそんなことを言われたら、この1分を一生忘れられないかもしれませんね。

そんなわけで、本作を観た多くの人は、「自分には忘れられない1分間があったのだろうか」などと考えたりするのではないでしょうか。

そんな1分間があれば良いなとも思うし、あったらあったで苦しそうでもあります。実際にスーは、ヨディと別れた後もこのセリフを引きずり、彼との1分間はスーの世界のすべてになってしまう。苦しすぎます。

しかしこのセリフ、ただロマンチックなだけでなく、今後の二人の関係まで示唆しているんです。

「1分の友達」とは、ずいぶん刹那的ではありませんか。会ったばかりなのに、ヨディはすでに「君との1分を忘れない」なんて言っている。まるで二人の関係が永遠ではないことを、ヨディは最初から分かっていたような言い回しです。

果たしてヨディには、何人の1分の友達がいるのでしょう。考えると少し切なくなるので、やめておきましょうか…。

愛を知らないヨディの屈折した人物像

興味深いのが、ヨディの複雑な人物像です。

人から愛されることを拒み、依存されたらそそくさとフェードアウト。特定の相手を作らない。働くのは嫌いなようで、いわゆるヒモのような生活を送っている。

一見楽な生き方にみえますが、実際ヨディは、社会から分断されたような孤独感を纏っており、危うい雰囲気があります。

ヨディの滲み出る哀愁には、家庭環境が大きく関係しています。

ヨディには母親がいますが、実の母ではありません。そして本当の母親の顔を、ヨディは知りません。

ヨディは、実母のことを頑なに隠していた育ての親、義理母を愛しているものの、憎んでもいます。

義理母の恋人への異常までの嫌悪感。義理母への底知れない執着心。そこには、ヨディの屈折した人間像が見て取れます。

ヨディはおそらく、愛を知らないのでしょう。どれだけガールフレンドを作っても、表面的な関係性しか築けない。深く踏み入って、愛することはできない。

そんな空虚さを纏うヨディの危うさに、多くの女性は翻弄され夢中になり、最終的に深く傷つくことになるのですね。

ウォンカーウァイ作品は、女性が魅力的に映されることが多い印象ですが、この作品ではヨディという男性が儚く官能的に描かれていると感じました。

足のない鳥

本作では、象徴的に「足のない鳥」という言葉が出てきます。

「脚のない鳥がいるそうだ。ただ飛び続けて、疲れたら風に乗って眠る。地上に下りるのは、死ぬときだけだ。」

脚のない鳥は、テネシーウィリアムズの『地獄のオルフェウス』からの引用といわれており、飛ぶのをやめれば即死んでしまう運命にある悲しい鳥です。

ヨディは、足のない鳥だったのでしょうか。

ずっとふらふら浮遊して、どこにも降り立つことができない。降り立つ場所もない。なぜなら、彼には故郷がないからです。

ラストシーン、息を引き取ったヨディは、ようやく飛ぶことをやめられたのでしょうか。それとも今でもまだ、あるはずのない巣を求めて飛び続けているのでしょうか…。

映画『欲望の翼』の見どころ

次に、映画『欲望の翼』の見どころを深堀りしていきましょう。

ラストシーン、ヨディとタイドの会話が最高

物語終盤、偽装パスポートの入手に手こずり、深傷を負ったヨディ。

旅に居合わせたタイドに見守れながら、静かに息を引き取ります。

死ぬ間際、タイドはヨディに、スーの話をします。

そしてスーがタイドに聞いた質問と同じことを、ヨディに聞きます。「1960年の4月16日、何してた?」

ヨディは静かにこう答えます。

「その女(スー)といた。」

なんとスタイリッシュな会話なのでしょう。

そして、「大切なことは、忘れない」

このやりとりだけで、ヨディはタイドがスーの恋人だったことを知っており、知ったうえで一緒にいた。さらにヨディがスーとの1分間を大切だと思っており、ずっと忘れていないことまで示すことができるのです。

こんなに些細で短い会話だけで!

ウォンカーウァイマジックに、唸らざるを得ません。

香港、雨、夜

本作『欲望の翼』について考えるとき、いつも雨、夜、熱帯雨林といった湿った質感が思い浮かびます。

作中の香港では、よく雨が降っています。じとじとした湿気。汗ばむ男女たち。ベット。暑くて眠れない夏の夜のような不快感を想起するような映像のオンパレードです。

よく考えると、昼間のシーンがほぼないんですね。

だからいつも、どこか閉塞感があり、息苦しい。

それは登場人物たちの、満たされない心を映しているようでもあります。

出てくるキャラクター、全員どこかじめっとしています。爽快な人なんていません。

しかしながらその湿りっけが、良い味になっている作品でもあります。というかこの湿っぽさが私は大好きです。

映画『欲望の翼』が楽しめる人の特徴

映画『欲望の翼』を楽しめる人の主な特徴は、下記のとおりです。

  • ウォンカーウァイが好き
  • 湿った空気感の映画が観たい
  • 男女の群像劇が好き
  • おしゃれな映画が好き
  • スタイリッシュな会話を楽しみたい
  • 忘れられない人がいる
  • 過去に未練があり、苦しんでいる
  • 夜中に一人でゆっくり観たい

映画『欲望の翼』が好きな人におすすめの映画

ここでは、映画『欲望の翼』が好きな人におすすめしたい映画をご紹介します。ぜひ併せてご覧ください!

天使の涙

ネオンきらめく香港の街、音と光。5人の若者たちの恋と青春群像を描いた香港の名匠ウォン・カーウァイによる映画作品。

全編にわたる極端なワイドレンズ、トレードマークのコマ落とし・コマ伸ばしの連続。アクション場面の躍動感、光と音の斬新でスタイリッシュな使い方など、ビジュアルセンスにさらに磨きのかかった一遍です。

製作は『黒薔薇VS黒薔薇』、『チャイニーズ・オデッセイ』など娯楽作品の監督を務めるジェフ・ラウ。撮影は『欲望の翼』以来コンビを組むクリストファー・ドイル。美術は『いますぐ抱きしめたい』以降のカーウァイと組むウィリアム・チョンなど、ウォン・カーウァイ作品の常連スタッフが集結しました。

出演は『妖獣都市・香港魔界篇』『シティー・ハンター』のレオン・ライ、『スウォーズマン/女神伝説の章』のミシェル・リー、『恋する惑星』『初恋』の金城武、『バタフライ・ラヴァーズ』『トワイライト・ランデブー』のチャーリー・ヤン、『チャイニーズ・オデッセイ』のカレン・モクいつも通りの豪華メンバー。

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恋する惑星

香港を舞台に、若者たちのすれ違う恋模様を描いた作品で、ウォン・カーウァイ監督の名を世に知らしめた群像ラブストーリー。メインキャラクター刑事223号を金城武、警官633号をトニー・レオンが演じています。第14回香港電影金像奨で最優秀作品賞など3部門を受賞しました。

「その時 彼女との距離は0.1ミリ。57時間後 僕は彼女に恋をした―」

エイプリルフールに失恋した刑事223号。振られた日からちょうど1カ月後、自分の誕生日までパイン缶を買い続けている。恋人を忘れるため、その夜出会った女性に恋をしようと決めた223号は、偶然入ったバーで金髪サングラスの女性と出会う。一方、ハンバーガーショップの店員フェイは、店の常連の警官633号にあてられた元恋人からの手紙を店主から託される。その手紙には、633号の部屋の鍵が同封されていた。633号に恋心を抱いているフェイは、その鍵を使って部屋に忍び込む……。

「用心深くなりレインコートを脱がない女」「誕生日までパイン缶を集める刑事」「同じ曲をかけ続けるハンバーガー屋の店員」「失恋の傷が癒えず、寄せられる恋心には鈍感な警官」……。無国籍な香港を舞台に交錯する男女を描いた、90年代の空気感をリアルタイムに封じ込めた群像劇。

おすすめポイント

『恋する惑星』は、同じくウォン・カーウァイ監督が香港を舞台に若者のディスコミュニケーションを描いた作品です。

90年代の香港の街並みや、希薄で餓えに満ちた若者の人間模様を味わうことができます。

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マイ・ブルーベリー・ナイツ

『2046』『恋する惑星』のウォン・カーウァイ監督初となる英語劇のラブストーリー長編作品。失恋したエリザベスは、カフェのオーナー・ジェレミーが焼くブルーベリーパイにより少しずつ傷が癒されていく。それでも元恋人への気持ちを捨てきれない彼女は、ひとり旅に出ることを決意する。エリザベスは行く先々でさまざまな問題を抱えた人びとに出会い、自分の中にもある心境の変化がもたらされる。

グラミー賞受賞歌手のノラ・ジョーンズが主演デビューを飾る。ジュード・ロウ、レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマンら豪華映画スターが勢ぞろい。

おすすめポイント

こちらはウォン・カーウァイ監督初の洋画作品。これまでの作品と同様、銀幕スターが勢揃いしており、見応え抜群です。

中国語以外のウォン・カーウァイ作品は想像できませんでしたが、実際に観てみると、これでもかというくらい彼の作品の魅力が発揮されており、ノラ・ジョーンズとの親和性には驚くばかりです。

ブルーベリーパイにアイスが溶ける象徴的なシーンは、一度見たら忘れられないものになるでしょう。

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まとめ

以上、映画『欲望の翼』の感想や見どころをご紹介しました。

本作、『恋する惑星』や『天使の涙』ほどのネオンきらめく映像美はなく、個人的にはウォンカーウァイらしさが全部出ている作品とはいえないと思っています。

それでも、初期作品特有の、完全に開花する前の素朴なウォンカーウァイの魅力が詰まっていると思うんですよね。

一番気兼ねなく観れるというか。

観賞後も、他代表作にあるような胸焼けの感覚はなく、しっとりと落ち着いた気持ちになれるところが好きです。(『天使の惑星』や『花樣年華』などは、あまりにも美しく濃厚なので、観るのにエネルギーがいるのです)

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!