こんにちは、映画好きライターの田中です。
ほぼ毎日映画を観ている私が、おすすめしたい映画の感想や見どころをご紹介。
今回取り上げるのは、手塚治虫が脚本を手がけた虫プロダクション屈指の大人向けアニメ『千夜一夜物語』です。
※ネタバレ含みます
目次
概要
手塚治虫と虫プロダクションがタッグを組んだ、世界初の大人のためのアニメーション「アニメラマ」シリーズの第1弾。
『千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)』を題材に、実写とアニメの合成、マルチプレーンカメラの全面使用など、革新的な手法を導入し制作された。声の出演は青島幸男、芥川比呂志、岸田今日子など。
手塚治虫と、『太陽の王子 ホルスの大冒険』の深沢一夫が脚本を担当し、『ある街角の物語』の山本暎一が監督した長編アニメーションドラマである。
『千夜一夜物語』の配信状況
2023年8月10日現在、以下の動画配信サービスで視聴できます。
サービス名 | 視聴状況 | 初回お試し |
---|---|---|
U-NEXT |
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プライム・ビデオ |
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あらすじ
主人公であるバクダッドの水売り商人アルディンは、偶然通りがかった奴隷市で、女奴隷のミリアムに一目惚れをする。アルディンはどうしてもミリアムが欲しかったが金がなかったので、強引にさらってしまう。その後二人は互いに愛し合い、幸せなひとときを過ごす。しかし、アルディンは警官のバドリーに富豪殺しの濡れ衣を着せられ、二人の仲は引き裂かれてしまう。
アルディンは監獄に入ることになったが、看守長の手助けで無事脱獄を果たす。ミリアムの元へ急ぐアルディンだったが、時すでに遅く、ミリアムは病でこの世を去っていた。アルディンは自分を陥れたバドリーへ復讐を誓い、彼を追いかける。そんなアルディンを待ち受けていたのは、世にも不思議な冒険の数々だった…!
『千夜一夜物語』の感想
映画『千夜一夜物語』の感想や見どころを紹介していきましょう。
富と地位と女。男のすべてが詰まっている
本作を一言で表すと、主人公アルディンがとんでもない生命力と豪運で、富と地位と女を手に入れようとする話です。
語弊があるかもしれませんが、少なくとも私はそう解釈しました。
魔法の船を手に入れた場合のシンドバッドの物語、と言い換えることもできるでしょう。
1969年ということで、現在とは大きく価値観が異なり、男女差も色濃く描かれています。その良し悪しというよりは、随所に現れる時代差が大変興味深かったです。
本作では、男性の欲望が描かれています。アルディンが一度きりの人生のなかで手にしたいものは、「富」と「地位」と「金」。そのどれか一つが欠けては駄目なのです。
途中、濡れ衣を着せられて監獄送りになったり、女護ヶ島でメス蛇に襲われたりと、何度も命の危機に襲われるアルディンですが、魔法の船を手にしてから人生は一変するのです。
人間の欲深さと愚かさ
望んだものはすべて手に入るようになったアルディンですが、どこか満たされません。
そう、かつて愛した女性、ミリアムにそっくりのジャリス(ミリアムの実の娘)だけは手に入らなかったのです。
主が望めば何でも差し出す魔法の船でしたが、災いの種となる「女」だけは出すことができなかったからです。
ジャリスは、羊飼アスラーンに恋をしていました。一国の王となったアルディンですが、ついに最後までジャリスを自分のものにすることは叶いませんでした。
よく考えれば、富も地位も、何も持っていなかった頃、アルディンの隣には最愛のミリアムがいました。
「人間の欲深さは何も生まない」
そう悟ったアルディンは、再び身軽になった体で都を後にします。
飄々と砂漠を歩くアルディンの姿は、どこか清々しい。
大人向けアニメーション
驚いたのは、大人向けシーンの描写です。
わざわざ大人向けと銘打ってることからも分かるように、当時アニメは子供のものという認識だったようです。
そのため、本作の大人向けシーンは、当時多くの人に衝撃を与えたよう。割と多くのアニメを鑑賞してきた私でも、ここまで見応えのある官能描写は初めてで、度肝を抜かされました…。
確かに色気のあるシーンは多いのですが、直接的な描写が少なく、抽象的でアート性が高いのです。
今何が起こっているのか、解釈を観客に任せるシーンが多かったので、想像を掻き立てられ、直接な描写よりもかえって官能的に映った場面も多かったです。
『千夜一夜物語』が楽しめる人の特徴
映画『千夜一夜物語』を楽しめる人の主な特徴は、下記のとおりです。
- 大人向けアニメが観たい
- 大河ドラマが好き
- 原作「千夜一夜物語」が好き
- 手塚治虫作品が好き
- ファンタジー映画が好き
- 昔のアニメが好き
- アニメ史に興味がある
『千夜一夜物語』が好きな人におすすめの映画
ここでは、映画『千夜一夜物語』が好きな人におすすめしたい映画をご紹介します。ぜひ合わせてご覧ください!
クレオパトラ
「千夜一夜物語」に続く、虫プロダクションと日本ヘラルドのアニメラマシリーズ。
脚本は里吉しげみ、監督は『千夜一夜物語』の山本暎一と手塚治虫が共同で担当。撮影は三沢勝治と山浦栄二。
白蛇伝
中国・宋の時代。西湖のほとりに住む許仙(シュウセン)のもとに、美しい娘・白娘(パイニャン)が現れ、許仙は一目で恋に落ちる。しかし、白娘の正体は許仙がかつてかわいがっていた蛇・白蛇の精だった…。
東映動画スタジオが製作した、長篇漫画映画。
中国に古くから伝わる「白蛇伝」は、白ヘビの化身である白娘と、その恋人である許仙の美しい愛の物語である。
この民話をもとに、青魚の精、少青(シャオチン)や、許仙の仲良しパンダと猫熊ミミィ、白娘と許仙の仲を裂こうとする高僧法海らが登場。美しい音楽と豊かな色彩で綴った豪華巨編に仕上げた。
構成・美術を岡部一彦・橋本潔。脚本・演出を薮下泰司、撮影を塚原孝吉が担当した。キャラクターのアフレコは、森繁久彌と宮城まり子がすべて担当。
太陽の王子 ホルスの大冒険
人里離れた自然で父と暮らす少年、ホルス。ホルスは狼の群れに襲われたところを岩男のモーグに助けられ、太陽の剣を譲り受ける。父を亡くしたホルスは遺言に従い、人々が暮らす村を目指し旅に出る。しかし、その途中で悪魔グルンワルドに捕らえられ、崖から突き落とされてしまう。
九死に一生を得て、村に流れ着いたホルス。彼は村人たちを悩ませていた大カマスを退治したことで、一躍村の英雄となる。ある日、廃墟の村で孤独な少女、ヒルダと出会ったホルスは、彼女を村に連れて帰るが……。
高畑勲監督が東映動画時代に手がけた長編デビュー作品。
深沢一夫による人形劇の戯曲『春楡の上に太陽』を原案に、太陽の剣を託された少年ホルスが、悪魔に立ち向かう姿を描く。
場面設計・美術設計・原画を宮崎駿。作画監督を大塚康生、原画を森康二が担当。1968年夏の「東映まんがパレード(東映まんがまつり)」の1編として公開された。
まとめ
以上、『千夜一夜物語』の感想をお伝えしました。
かなり昔の映画で、時代差を感じることもありますが、今見ても革新的な技法がたくさん使われています。音楽の使い方や、実写とアニメの混じった描写など、観ていて飽きない演出ばかりです。
どんな世代の方でも(刺激が強い場面はありますが)、アニメが好きなら楽しめる作品だと思うので、ぜひご覧になってみてください。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!
舞台は、人類が宇宙進出を果たした21世紀。地球に対し「クレオパトラ計画」を企むパサトリネ星。計画の真相を調べるため、3人の地球人が立ち上がる。彼らの精神のみをクレオパトラが生きていた紀元前50年のエジプトにタイムスリップさせることに…。