アフィリエイト広告を利用しています

映画『アイスクリームフィーバー』感想と見どころ。100万年経ってもあの時のアイスクリームの味を忘れない【ネタバレあり】

こんにちは、映画好きライターの田中です。

ほぼ毎日映画を観ている私が、おすすめしたい映画の感想や見どころをご紹介。

今回取り上げるのは、2023年公開の映画『アイスクリームフィーバー』です。

吉岡里帆さん、モトーラ世理奈さん、松本まりかさんら豪華キャストに、監督はアートディレクターでお馴染みの千原徹也さん。さらに原作は川上未映子さん。

眼福で詩的でアートな映画になること間違いなしの布陣ということで、公開前からとても楽しみにしていた作品です。やっと観に行けたので、興奮冷めやらぬうちに感想を書きたいと思います!

※ネタバレ含みます。原作未読です。あしからず。

概要

川賞作家・川上未映子の短編小説「アイスクリーム熱」原案。世代の異なる4人の女性の思いが交錯する姿を綴ったラブストーリー。

主人公、菜摘を吉岡里帆が務め、佐保をモトーラ世理奈、貴子を音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」の詩羽、優を松本まりかがそれぞれ演じた。広告、ファッション、テレビドラマなどで活躍するアートディレクター、千原徹也が初監督作品。

あらすじ

常田菜摘は、美大卒業後にデザイン会社に就職する。しかしうまくいかず、現在はアイスクリーム店でアルバイトをして生活している。今後の身の振りについて悩む菜摘は、常連客の作家・橋本佐保に運命的なものを感じ、彼女の存在が頭から離れなくなる。菜摘のバイト先の後輩、桑島貴子は、そんな菜摘を複雑な気持ちで見つめていた。

一方、菜摘の働くアイスクリーム店の近所で暮らす高嶋優の家に、疎遠だった姉の娘・美和が突然訪ねてくる。数年前に出て行った父を探しに来た美和との共同生活に戸惑う優だったが……。

『アイスクリームフィーバー』の感想

まずは、映画『アイスクリームフィーバー』のざっくりした感想を述べていきます。

「家族」って、絆? 呪い?

作中で強く印象に残ったのは、松本まりかさん演じる高嶋優の人生について。

優は、恋人を実の姉に奪われ、さらに二人は結婚し子供を作ります。

それ以来、姉と疎遠になってしまった優。しかし姉の死をきっかけに、姉の娘である美和が優のもとへ訪れます。

恋人をきっかけにこじれた姉との関係。縁を切っていたのに、こうして家族の絆には抗えず、優は渋々美和を一人暮らしの家へ迎え入れます。

これが友達同士なら、おそらく永遠に縁を断ち切ることができたのでしょう。しかし、家族となると、そうはいかない。それは強固な絆であり、呪いのようでもあると感じました。

日々仕事をこなし、近所の銭湯と帰り道のアイスクリームに生きがいを見出す30代女性、優。彼女は、大好きだった恋人が姉と結婚し子供を作ったという事実に、どう折り合いを付けて生きてきたのでしょう。そして美和の出現をきっかけに、心境がどう変化していったのでしょう。

本作は、表面こそ非常にポップで可愛らしいですが、意外と重くグロテスクな一面があり、その温度差に痺れました。

とにかく、優には幸せになってほしいですね…。

佐保の存在はまるで胡蝶の夢

一方菜摘パートは、やはり佐保の存在が光ります。

作家で、全身黒ずくめ、アイスクリームを最後まで食べきれず道端に捨ててしまう彼女は、口数が少なくとてもミステリアス。

菜摘も、アイスクリーム屋に訪れた佐保に、一瞬で惹かれます。

そんな佐保は、まるで胡蝶の夢のよう。

胡蝶の夢とは、現実と夢の区別がつかないことの例えに使われる言葉です。もとは、荘子が夢の中で蝶になり、自分が蝶か、蝶が自分なのか区別がつかなくなった「荘子」斉物論の故事に基づいています。

物語の終盤、菜摘と心を通わしたあと、佐保は突如姿を消します。そして彼女の部屋には、黒い蝶だけが残されていました。

「佐保」は、現実なのか夢なのか。

佐保自身は、「ひと夏の出来事として通りすぎる存在でいたい」と言います。そして実際、そのとおりになってしまった。

残された菜摘は何を思ったのでしょう。

喪失感の残る雰囲気のなか、菜摘は「もっと高く飛べると思った」と、前向きな言葉を残します。佐保との出会いは、デザイナーの夢を諦めていた菜摘を、少しだけ前に進ませるきっかけになったのかもしれません。

「ミリオンアイスクリーム」の意味 ※重大なネタバレあり

本作は、完全に眼福のために観た映画だったんですが、いやはやなんとも、痺れる演出やセリフ、シーンのオンパレードでした。(原作も素敵なのだろう。読みたいです。読む。)

特に、菜摘が勤めている「シブヤミリオンアイスクリーム」の店名について。

佐保に「ミリオンアイスクリーム」の意味を問われた菜摘は、笑顔でこう答えます。

「100万年君を愛す」

痺れますね…。粋で、素敵です。

その後、なかなか次作を書けなかった佐保の待望の新作も、『100万年君を愛す』というタイトルなっているんですよね。

確か、ウォンカーウァイ『恋する惑星』で、金城武演じるモウ刑事と、恋人の電話口での合言葉が「1万年君を愛す」でしたよね。

本作ではプラス99万年。さらに壮大です。

『アイスクリームフィーバー』の見どころ

次に、映画『アイスクリームフィーバー』の見どころを深堀りしていきましょう。

ミュージックビデオのような映像美

本作は、はじめに「これは映画ではない」と銘打っているように、長尺のミュージックビデオ感覚で鑑賞することもできます。

色とりどりのアイスクリームや、店のネオン。優や佐保が住んでいたマンションのオブジェ。「水曜日のカンパネラ」の詩羽演じる貴子のダンス。菜摘と佐保の秘密の逢瀬…。

シーンすべてが感覚的でアート。映画を観ているようでもあり、ミュージックビデオを眺めているようであり、とっておきの写真集をめくっているようでもある。

まるでよりどりみどりのアイスクリーム屋さんのようです。

さまざまなコンテンツやカルチャーを一気に楽しめる、贅沢な作品でした。

松本まりかさんの魅力

本作をさらに魅力的にしているのは、演者さんたちのナチュラルな演技でしょう。

そのなかでも、筆者が個人的に光っていると感じたのが優を演じた松本まりかさんです。

恋人を実の姉に奪われ、さらに姉の死後、娘が父親を探すため訪ねてくるという複雑な状況の優。しかし、表面上は仕事も順調で、銭湯とアイスクリームが生きがいの人生を謳歌した普通の女性に見えます。

その絶妙な役どころを、非常にチャーミングで自然に演じていたと思います。

優という人物の、人懐こいのに、どこか人と距離を置くドライな感じが良かったですね。とても好きなキャラクターです。

帰りはぜったいアイスクリームが食べたくなる

これは間違いない事実なので断言しますが、必ず、観賞後はアイスクリームが食べたくなります。

どうしても食べないと1日が終われないような気がしてきます。それが「作品の力」というべきものなのでしょう。

私は映画館を出た後すぐアイスクリーム屋さんを検索し、その足で向かいました。クーラーの効いた店内で食べる真夏のアイスクリームは最高の味でした。

そういった思い出も込みで、この作品は忘れられないものになりました。

100万年経っても、あの時のアイスクリームの味はけっして忘れないでしょう。

『アイスクリームフィーバー』が楽しめる人の特徴

映画『アイスクリームフィーバー』が楽しめる人の主な特徴は、下記のとおりです。

  • アイスクリームが好き
  • 女の子がたくさん出てくる映画が好き
  • アートな作品が好き
  • 音楽が好き
  • 東京が好き
  • 今より少し前に進みたい
  • 前向きになれる映画が観たい
  • ウォンカーウァイが好き

『アイスクリームフィーバー』が好きな人におすすめの映画

ここでは、映画『アイスクリームフィーバー』が好きな人におすすめしたい映画をご紹介します。ぜひ、併せてご覧ください。

THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ

小さなサーカス団でマジシャンの助手をしている、29歳のオリアアキ。10年前に女優を夢見て上京した彼女だが、30歳を目前に生きる目標を見失っていた。アキはステージ上で、マジシャンの催眠術にかかる演技をしているうちに、妄想と現実の境界が曖昧になっていきく。そんな不安定な状態のアキにとって、唯一の美しい思い出は、恋人であるカイトと過ごした時間だった…。

『チワワちゃん』『真夜中乙女戦争』などで注目を集めた二宮健監督の商業映画デビュー作。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015審査員特別賞を受賞したインディーズ作品『眠れる美女の限界』をセルフリメイク。

主人公のアキ役を桜井ユキ、恋人カイト役を高橋一生が演じた。

長尺ミュージックビデオのような美しい映像が魅力の作品です。

少女邂逅

いじめられたことがきっかけで、声が出なくなってしまったミユリ。そんなミユリの唯一の友達は、一匹の蚕だった。ミユリは山の中で拾った蚕に「紬」と名付け大切に飼っていた。しかし、いじめっ子の清水に蚕の存在がバレて、捨てられてしまう。唯一の友達を失い絶望したミユリ。そんなある日、亡くなった蚕と同じ名前を持つ「富田紬」という少女が転校してきて…。

孤独な女子高生と転校生の交流を描き、「MOOSIC LAB 2017」観客賞を受賞した青春ドラマ。

ミユリ役を「ミスiD2016」グランプリの保紫萌香、富田紬役をモデルのモトーラ世理奈が演じた。監督は『美味しく、腐る。』で早稲田映画まつり観客賞を受賞した枝優花。

WE ARE LITTLE ZOMBIES

火葬場で出会ったヒカリ、イシ、タケムラ、イクコ。彼らは両親を亡くしても、泣くことができなかった。ゾンビのように感情を失った彼らは、自分たちの心を取り戻すために、誰もいなくなってしまったそれぞれの家を巡ることに。やがて彼らは、ゴミ捨て場で「LITTLE ZOMBIES」という名のバンドを結成する。そこで撮影した映像が話題を呼び、社会現象まで巻き起こす大ヒットとなるが…。

『そうして私たちはプールに金魚を、』で第33回サンダンス映画祭ショートフィルム部門でグランプリを受賞した長久允監督の長編デビュー作品。

『そして父になる』の二宮慶多、『クソ野郎と美しき世界』の中島セナらが主人公の子どもたちを演じ、佐々木蔵之介、永瀬正敏、菊地凛子、池松壮亮、村上淳らが脇を固める。第69回ベルリン国際映画祭ジェネレーション(14plus)部門でスペシャル・メンション賞(準グランプリ)、第35回サンダンス映画祭ワールドシネマ・ドラマティック・コンペティション部門で審査員特別賞オリジナリティ賞を受賞。

まとめ

以上、映画『アイスクリームフィーバー』の感想や見どころをご紹介しました。

ストーリーも、映像表現も、音楽も楽しめる、よりどりみどりのアイクスリーム屋さんのような作品。

ぜひ観賞後はアイスクリームを食べながら余韻ひ浸ってみてはかいかがでしょうか。

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!