レオス・カラックス(フランス映画監督)
レオス・カラックスは早熟の天才でした。23歳の時に『ボーイ・ミーツ・ガール』で長編デビューをすると、映画評論家に「恐るべき子供」「ジャン・リュック・ゴダールの再来」と呼ばれるまでになります。
レオス・カラックスの代表作は『ボーイ・ミーツ・ガール』、『汚れた血』、そして『ポンヌフの恋人』。これらはドニ・ラヴァン演じるアレックスが主人公なので、アレックス三部作と呼ばれています。
あまりの完璧主義者ゆえに、製作費が高額になってしまい、1999年作『ポーラX』制作後は長い期間長編映画からは離れてしまいます。
その後2012年『ホーリー・モーターズ』で久々の長編作品を制作します。『ポーラX』から13年経っていました。
今回は『ボーイ・ミーツ・ガール』、『汚れた血』、『ポンヌフの恋人』そして『ホーリー・モーターズ』を少しだけ紹介します。その前に、ドニ・ラヴァンについても予備知識として書いておこうと思います。
ドニ・ラヴァン
レオス・カラックス作品を語る上で欠かせないのが、ドニ・ラヴァンの存在です。彼はカラックスと身長・体重が同じであり、カラックスの分身と呼ばれています。
彼の魅力は、何と言ってもその人間臭さではないでしょうか。主演の俳優といえばイケメンだったり、ムキムキなのがほとんどです(偏見)。それらの俳優とは違い、彼が演じるのは苦悩や弱さ、時には狂気を抱えた人間なのです。しかし、一度観ると忘れられない何とも言えない強烈な個性も放っています。
きっとカラックスにたくさんの無茶ぶりをされて、かなり大変だっただろうなと勝手に想像してます。
ここから作品の紹介をしていきますが、ネタバレは書きたくないので、あらすじは書きません。
『ボーイ・ミーツ・ガール』(1984年)
カラックスの長編デビュー作品。モノクロ映像で撮影されています。
人によっては退屈だと感じる作品かもしれません。登場人物の一つ一つのセリフとシュールな滑稽さを楽しめる作品ではないでしょうか。
『汚れた血』(1986年)
『ボーイ・ミーツ・ガール』はモノクロ映画でしたが、『汚れた血』はカラックスの長編作品では初のカラーです。しかし、まるでカラーを何本も撮り慣れたかのような見事な色使いであり、鮮やかな配色がとても目を引きます。その映像の美しさに私は完全に虜になりました。
この映画では、高感度フィルムをわざと低感度にセットし、それを減感現像することで強烈な色彩を表現したそうです(何言ってるかわからん)。
アレックス三部作の中ではスピード感もあるので、スローテンポな作品が苦手な人でも楽しめると思います。
アンナ役のジュリエット・ビノシュ(『ショコラ』主演女優)も美しいですね。ちょっと抜けた感じですが。
『ポンヌフの恋人』(1991年)
そして『ポンヌフの恋人』。この作品の見どころは、なんといっても花火のシーン。映画史に残る 暴挙 映像美とそして音楽(ちょっと意外な選曲も)ですね。
鮮やかな配色を押し出した『汚れた血』に比べるとかなりどんよりとした印象。内容もそういう作品ですからね。
この作品でもジュリエット・ビノシュ(役名もジュリエット)がヒロインを演じています。『汚れた血』とは全く違う役柄で、そのギャップも楽しめますね。
これ以上あれこれ言うと楽しみが減ってしまいそうなので止めときます。
ちなみに、本作は「呪われた映画」としても有名です。
予算を大幅にオーバーして、制作会社が潰れたり、保険会社も潰れたり、なんだかんだで制作になんと3年かかってます。
金かけすぎてセットを解体する費用が残ってなかったようで、今でも残ってるそうですね。
「呪われた映画」を作った代償として、カラックスは映画界から干されます(自粛?)。
そして、『ホーリー・モーターズ』(2012年)へ
久しく長編撮れなくて、溜まっていた物を凝縮した。そんな映画だと思います。
『ホーリー・モーターズ』で重要なのはストーリーよりも、ドニ・ラヴァンが演じる数々の役柄であり、シーンが一つ一つ目まぐるしく変わる様、そしてレオス・カラックスの映画観ではないでしょうか。
先に挙げたアレックス三部作に比べると、一貫したストーリーがあるのではなく、いくつかの映画をつなげて一つの作品に仕上げた印象がありました。あくまでも個人的な感想ですが。
確かにこの映画は様々の要素を詰め込んだ大作で非常に楽しめましたが、散りばめられた引用やオマージュに全て反応できるほどの知識が、私にはまだ乏しいというのが正直な感想でした。
『ホーリー・モーターズ』を100%楽しむには、まだまだ勉強不足でした…
オススメ作品
カラックス作品の魅力は映像の美しさ、アレックスのぼそぼそ、肉体美、個性的で美しい女優、セリフの言い回しなどなど。
まだレオス・カラックス作品を見たことないって人には、個人的に『汚れた血』と『ポンヌフの恋人』をオススメします。映画好きなら一度は観て欲しい作品です。
レオス・カラックス作品は何度観ても飽きないですね。